研究部門

ソフトマターユニット

 –中性子構造解析と合成化学の接点を模索する新分野 –  自然界で営まれる秩序構造形成を考えるとき、合成反応のすぐ隣で連続して起きる自己組織化が重要であろう。植物や微生物によるセルロース合成がその例である。細胞によるセルロースの生合成に続き、細胞外へのセルロースの排出、結晶化、凝集という自己組織化に連続的に移行する。生合成がきっかけとなりその産生物が自己組織化するという化学と物理の連携プレーである。この過程で主役を演じるのは細胞膜に配列したセルロース合成酵素複合体(ターミナルコンプレックス)で、生物学的要因である。これを物質科学の視点に立ち言い換えれば「ターミナルコンプレックスという特異な化学反応場での高分子合成(酵素重合反応)と反応に誘起された反応生成物の自己組織化」と言える。このような重合誘起自己組織化は非平衡ソフトマターの新しい研究題材としても興味深い。このような興味のもと私たちは中性子小角散乱法(Small-Angle Neutron Scattering 略してSANS)を利用して反応溶液のその場観察を行う事を試みる。リビングアニオン重合、放射線プロセスによる固相ラジカル重合、含フッ素多環芳香族化合物のフルオロフィリック効果、などが考えられる。重合の結果得られた分子量および分子構造が明確な低分子化合物においても、分子間相互作用に基づく自己組織化は、有機ゲル、液晶、薄膜など分子集合体が示す様々な機能性の発現に重要な役割を果たしている。中でも有機薄膜デバイスは、軽量かつフレキシブルという機能面だけでなく、印刷プロセスによる作製が可能なことから環境への負荷の観点からも注目を集めている。有機薄膜デバイスの性能は薄膜の構造に大きく依存することから、薄膜の構造を明らかにし、分子の自己組織化およびデバイス特性との相関を解明することが不可欠である。薄膜等の分子集合体の構造を、斜入射散乱や、反射率計を含めた中性子線、X線による構造解析により試みる。

 

 本ユニットで実施する基礎的な研究をもとに企業との共同研究に発展させる。

 

 測定実施場所は、BL開発部門が運営する茨城県構造解析装置(iMATERIA)に加え、理研(和光)に建設中の小型中性子源小角散乱装置(A-STEP (JST)採択課題)を考える。


茨城大学大学院理工学研究科量子線科学専攻・リビングソフトマター研究室(小泉研究室)へリンク

ユニットメンバー

小泉 智 (大学院理工学研究科[兼務教員],ユニットリーダー)
能田 洋平(工学部[兼務教員])
久保田 俊夫(工学部[兼務教員])
福元 博基(工学部[兼務教員])
吾郷 友宏(工学部[兼務教員])
西川 浩之(理学部[兼務教員])